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生産者の

想い

商品としての豚だけではない、育てているからこそわかること、思うことなどをインタビューしてもらいました。

高清水養豚組合を育てた​先代組合長と、これからの未来を担う組合長。

それぞれの養豚への想いとは。

高清水養豚組合 先代組合長

邊見 良一

ー 国内でもかなり珍しい自社の飼料工場。なぜオリジナルの餌を作ろうと思われたのでしょうか?

先代組合長 いい肉を作るためには、系統はもちろん、その豚の性質・餌・環境管理、全てが重要になってくるんですよ。人間もそうだけど、国が違うとその人の持つ匂いもそれぞれ違うでしょう。そういう体臭は食べ物からくるんですよ。その豚の特性にあった餌を食べていないとね、おいしい豚は育たないんですよ。

ー エコフィードを取り入れようと考えた背景にはそのような想いがあったのですね。実際にエコフィード施設を作ろうと動き出したきっかけなどはあるのでしょうか?

先代組合長 もともと餌の原料としてパン粉を使っていたんですが、パン粉を使うとおいしくなると話題になり、価格が高騰してしまったんです。そこで、パン粉に代わる原料として、宮城で多く使われている生麺を乾燥させて使おうと考えました。以前からエコフィード施設の構想はあったので、このタイミングで実現しようと思ったんです。

ー 食べたものが身体を作るということですね。ところで、餌を作る際に地域で出た余剰食品を原料として使ってるそうですが、エコフィード(食品リサイクル)に関してはいつ頃からお考えになっていたのでしょうか?

先代組合長 昭和45年ごろ、2年間アメリカに農業の研修に行ったんです。アメリカ人と生活を共にして思ったのは、彼らは無駄になることをしないんですよね。今、日本の食料廃棄率は30%とも言われていますが、仮に100万トンの食料があったとしたら、30万トンも捨てられているんですよ。その中には売れ残りや賞味期限切れなど、まだまだ食べられる状態のものもたくさんある。もったいないでしょう。それを飼料として使えば、無駄を減らすことができる。そういうところから変えていく必要があると感じました。

ー 地域循環まで考えた餌作り・・・!素晴らしいですね。

その餌の配合はご自身でされているそうですが、一番大事にしている点はどんなところでしょうか?

先代組合長 うちの豚の特性を最大限に生かせるよう「消化吸収」には気を使っています。”消化できて、吸収もできる”ことが大事。そうじゃないとせっかく良いものを食べても栄養が行き渡らない。

あとは、餌の脂の量を抑えて良質なでんぷん質を与えること。豚の脂や肉質自体がよくなるんですよ。

ー 「消化吸収」言葉はよく聞きますが、栄養を取り入れるためには、ものすごく重要なことなのですね。なぜここまで考え抜かれた配合にできるのでしょうか?

先代組合長 成長段階や体調を見ながら配合できるのは、自分が育てている豚だからこそ。市販の餌は広く色々な豚に対応する必要があるから、平均値は高くても細かい調整までは難しい。自分で配合すればうちの豚の特性だけに合わせられるじゃないですか。

 

豚はデリケートなので、正直めんどくさいんですよ(笑)でもこれをひとつひとつ当たり前にこなしていくことで良い肉質、おいしさに繋がると思っています。

ー 当たり前のことを続けることで、こだわりが生まれるのですね。そのこだわりの詰まった豚肉を、直接消費者に届けたいと思ったきっかけはありますか?

先代組合長 実は以前、スーパーに卸したことがあるんですよ。たまたま見つけて買ってみたら、うちのシールは貼ってあるんだけど、中身が違っていたことがあったんです。自分たちの肉だから違うということはすぐわかったんですけど、消費者にはわからないじゃないですか。シールが貼ってあればうちの豚だと思うでしょう?そういうこともあって、直接届けたいと思うようになりました。

ー それはあってはならないことですよね。。買う立場からしてもショックです。今回、直接お届けできることになったわけですが、消費者に向けてメッセージをお願いできますか?

先代組合長 良質な豚は肉質はもちろん、脂までおいしく食べられる。ぜひ、本当の肉の味を味わってもらいたい。

そしてうちの理念でもある「みんなの幸せ」「地域への感謝」。
今は地元でうちの豚を買えるところがないので、
地域の方にもうちの豚の味を知って欲しいと思っています。

高清水養豚組合 組合長

邊見 優洋

インタビュー

ー 健康に育った肉はおいしいと言われていますが、ストレスが与える肉質への影響はどんなものがあるのでしょうか?

組合長 一般的に健康に育った方がおいしいとは言われていますが、「肉」という大きな枠で見ると一概には言えません。豚以外の肉でいうと、立っているのも辛いほど限界まで食べさせてストレスをかけることで「おいしい」と言われる状態を作ることもあります。

ー 「健康=おいしい」と言う理論は成立しない場合もあるんですね。では豚だけに関してだけ言うとどうなのでしょうか?

組合長 豚に関しては健康な方がおいしいと思います。豚はストレスがかかると体の中のビタミンが消費され、ドリップが出やすくなります。タンパク質や水分など、細胞の集合体と言われるドリップ(肉汁)が出る=旨み成分が逃げるということなので、当然味に影響が出ます。また、抗酸化作用があるビタミンを消費することは、酸化しやすい肉質になってしまうんです。それは食べる状態のお肉になってからも言えることなので、ストレスをかけずに育てることは肉質を考える上でとても重要だと思っています。

ー ストレスが体に与える影響は計り知れないですね。では、おいしい肉質に育てるために「血統」「餌」「環境」を大事にされていますが、このポイントは3つとも必要なのでしょうか?

組合長 必要ですね。たとえ健康に育ったとしても、おいしい肉質に特化したDNAでなければ、旨みや香り、やわらかい肉質など、求めるおいしさを実現することはできないし、逆にどんなに優れたDNAを持っていたとしても、それを活かせない餌の配合や環境であれば、せっかく潜在的においしさを実現できる能力を持っていても引き出すことが難しくなります。だからこそ「血統」「餌」「環境」この3つのバランスが重要で、どれも切り離して考えることはできないんです。

 すべてにおいて妥協せずこだわりを持っていて本当にすごいです。組合長からもお伺いしたのですが、餌は自社でレシピから作ってらっしゃるのですよね。配合以外の部分で大変だと感じる点はありますか?

 

組合長 正直なところ、餌代は人件費より多くかかってしまうんです。安く済ませようとして、自分たちの豚に合っていない餌を与えれば生産性は上がるかもしれないけど、感動するほどの肉質にはならない。

肉質にこだわるというのは本来、プラスαの贅沢な部分ではあるんですが、私たちはそこに絶対的なこだわりを持っているので、コストがかかっても妥協はせずにやっています。

ー おいしさを追求し、手を抜かずこだわり抜いて育てた32℃豚。これは食べてみたいと思う方も多いのではないでしょうか。消費者のみなさまへ向けて、伝えたい思いをお聞かせいただけますか?

組合長 もしかしたら「手間のかかったおいしい肉が食べたい」という方はそれほど多くないかもしれない。「それなりの味でいいから安く食べたい」「それほどこだわった肉でなくていい」などそれぞれの事情や考え方があると思います。

でも私たちは、”なんとなく”ではない、本当にこだわり抜いた良いものを追求し続けていきたいし、それをできるだけ多くの方に喜んで食べてもらいたいと思っています!

ー 最後に、今後の養豚業への想いと、次世代に伝えたい想いをお聞かせください。

 

組合長 本当にこだわり抜いたものが必要とされれば、養豚家のためにも、豚のためにも良いことだと思います。消費者の方々から理解されれば、もっと頑張ろうと思えるだろうし、養豚家が潤えば、もっと良い環境で、もっと良い豚を育てることができる。他の肉の代替えではなく「豚っておいしいよね」と多くの方に喜んでもらえるようになれば嬉しいですね。

また、おいしいものを食べるということは、自分も周りも幸せを感じることができるし、一番心を豊かにすることだと思います。次の世代を担う子供達にしっかり伝えていくためにも、本物を残していきたいですね。

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interview

01

interview

ー エコフィードでは地域の余剰食品を使われているそうですが、地域の食材を積極的に使っている理由を教えてください。

先代組合長 国産のものを買えば、お金は国内で回すことができる。いま流行っている飼料米もそうでしょう。農家から米を買えば、お金は農家にいきますよね。決して海外にはいかない。そうすれば、景気もよくなって、地域の循環をしっかりと回せるようになる。わずかな力かもしれないけど、取り組んでいく必要があると考えています。

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